第7章 『謳歌』 ※R‐18
「私のチョコ返せーっ!」
「いーだろ一つくらい。うっせーな!」
「最後の一個なのにぃっ!あっ、食べた!返せ馬鹿ー!」
「食い意地張ってんじゃねー」
畳の上で取っ組み合いを開始する幸村と桜子。
読書中の佐助はそちらにチロリと目玉を動かす
(何故に人の部屋まで来て暴れるかなぁ……)
俺が安土に行ってる間にどうやらこの二人は更に進展したみたいなんだが、
日常の様子は以前とさほど変化は無い。
毎日下らない事で言い合いや小突き合いをしててまるで中高生の戯れだ。
それでいて、たまに幸と男二人で晩酌でもしようものならーーー
「あいつはほんっとに可愛い。そうだよなー?」
「うんうん、そうだね。それ、これで五回目なんだけど」
「…………なぁ佐助」
「何」
「あいつ今まで何人の男と付き合ってきたんだろーな……」
「さぁ………」
(うわぁ、酔ってる……)
酒の酔いに任せて惚気や憂いを聞かされるのだ。
一方、桜子さんは、シラフの常態で二人きりになった時にーーー
「ねぇねぇ聞いてよ佐助、幸ってばさぁ」
「うんうん、今度は何?」
「見てほら、壊れた髪飾り、綺麗に直してくれたの~。前に幸に買って貰ったやつ。ほんっと器用だし格好良いよねー」
「ああ、そうだね。」
「…………今まで他の子にもあげたりしてたのかな……ねぇ、幸の元カノってどんな子か知ってる?」
「さぁ………」
(知ってても、言えない……)
ーーーこんな調子で両方から個別に語られる。
まぁ、幸せオーラ全開ということで良しとしよう。
しかし
嵐の前の静けさを感じるのは俺だけだろうか?
(……考え過ぎか………)
佐助は視線を再び書物に戻し、次のページを開いた