第3章 『面影』
「賑やかだなぁ~。おや、天女のお目覚めかい?」
ひょこっ、と襖から背の高い男がそう言いながら笑顔で覗いてきた。その後ろから
「佐助、女の世話が終わったら俺と刀の相手をしろ」
と、もう一人、左右目の色が違う金髪の男が現れる。
「紹介するよ。こちらの方が武田信玄様。そしてあちらの方が上杉謙信様。」
(………………………………)
「わっ、危ね」
クラリと軽い目眩がした桜子を幸村が咄嗟に支えた。
武田信玄、上杉謙信。
こんな知名度の高い人物と実際に会えるなんて歴史学者が知ったら泣いて羨ましがるだろう。
しかもここに揃った男達の顔面偏差値たるや。
感激や、様々な感情が入り乱れ胸を押さえる桜子に「分かるよ、その気持ち」と佐助は眼鏡を煌めかせながら手で整え、一歩前へ踏み出した。
「武将達も揃った事だし、そろそろ君の自己紹介して貰ってもいいかな?」
「あ。忘れてた。」
我に返り姿勢を正す。
「初めまして!木下桜子といいます!21歳、学生、独身です!好きな食べ物は肉です!特技は、剣道と空手とダンスと………取り敢えず体を動かす事は何でもこいです!えっと~、料理や裁縫とかは苦手で、あとは」
「長ぇよ!」
「桜子さん、落ち着いて。」
幸村と佐助の突っ込みにハッとする。
(やべっ、気合い入れ過ぎたか…………!?)
「そんな張り切ったデカイ声でわざわざ好きな食べ物て………………しかも独身とか言われても…………………ぶっ」
誰も聞いてねーよ!と腹を抱えて笑う幸村の姿にカァーッと顔が熱くなる。
「そ……そんなに笑う事ねぇじゃん!ムカつく~!なにコイツ!」
「口も悪ぃ~。男みてぇ」
「あんだって!?」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人を眺めて
うんうん、元気でいいじゃないか。と目尻を下げる信玄
「しかし……体を動かす事は何でもこい、か…………。あんな可愛い顔をして…………イケナイ子だ。」
「信玄様、なにか違う解釈してません?」
色香を漂わせながら妖しく笑む信玄に一抹の不安がよぎる佐助だった。