第3章 『面影』
『桜子』
記憶の中で巡る声と顔
「…………………………………」
喉がヒクつく。
(嘘……………なんで……………なんで…………)
「………………………っ、」
「幸。ちゃんと声かけてから入ってこなきゃ駄目だよ?女性がいるんだから。」
「はいはい、わーったよ。」
佐助に諭され、そっぽを向きながら頭を掻く男。
まだ少し少年ぽさも残るような端正な顔をしていた。
(“ゆき”…………………??)
「……………佐助、この人は…………?」
「彼は真田幸村。今はここで生活してるんだ」
「………………………………」
(真田幸村………………って、え………えぇぇ!?………えっと…………まさか……………)
「あの真田幸村!??ほ、本物!?」
「なにが“あの”かは知らねーけど、俺は“本物”の真田幸村だ。」
(うわ……うわ………うわぁぁぁぁ)
「やべぇ!マジかよ!すげぇぇぇ!!」
ショートパンツから出ている太腿を見て幸村が慌て始めたのにも気付かず、桜子は興奮気味に両手の拳を握り締め目を輝かせた。
ひ…………“日本一の兵(ひのもといちのつわもの)”……………日本一の兵が……………っ!!!
ふるふると全身を震わせたり手足をバタつかせて騒ぎたてる様子に、幸村は怪訝な顔をした。
「…………おい佐助………大丈夫か?この女………」
「ああ。正常な判断さ。俺も幸や謙信様や信玄様………名だだる武将達に出逢った時は、寄せては返す波のように胸が高鳴ったものさ」
「げっ、なんじゃそら」