第7章 『謳歌』 ※R‐18
「…………………」
一瞬で喧騒は収まり、静寂が訪れる
組み敷かれるような体勢になった桜子は、すぐそこにある顔を見つめていた。
(近い………)
初めは驚いた表情だった幸村の瞳が真剣なものへと変わっていき、緩やかに唇に降りてきた
「んっ………」
想いが通じ合ってから数週間、幸とは仕事の休みに出掛けたり人目を盗んでは軽く触れるだけのキスをする日々を送ってきた。
今回もいつも通り。
そう、思っていたのだが
(…………!)
唇の間から舌が侵入し、強引に私のそれを捕らえた
「ふっ………く……」
舌が絡み合って、口の隙間から吐息が漏れる。
離れると、次は首筋へと唇が移ってきた
手の平が私の腕のつけ根辺りに当てられ……
きっと、この先はーーーーーーーーーー
「ま…待てっ!!」
桜子が、のし掛かる胸を押し退け顔面に手をかざすと、相手の片眉がピクリと動くのが見えた
「………おりゃ村正じゃねーぞ」
「そーだけど……でも待って!今日は駄目っ!」
「“今日は”だぁ………?」
ふぅ、と息を吐き上体を起こすと幸村は立ち上がりながら口を開いた
「じゃあ明日ならいーんだな。」
「えっ………!?」
「正直、もう我慢が利かねーから。」
スタスタと襖の方へ歩いて行き、
引手に指をかけ、こちらを振り向く
「明日の夜、逃げんなよ」
そう言い残すと、ピシャリと閉めていってしまった。
手をかざしたまま硬直していた桜子のこめかみから一筋の汗が流れ落ちる
(た、大変だ…………………!!!)