第7章 『謳歌』 ※R‐18
「待て!」
「お手っ」
「おかわり」
「伏せ~」
桜子の指示通りに村正が機敏に動き、尻尾をはたはたと揺らしている。
「凄いね、完璧!はい、ご褒美」
焼き終わり冷ました魚をほぐし骨を取り除き、口元にやると美味しそうにパクつくのを綻んだ顔で見守る。
最後に食べ終えた魚が刺してあった串を石の上に置くと、うーんと伸びをした
「あー釣り楽しかったー。途中で川に落ちちゃったけど」
「あんな体勢で覗き込むからだって。まぁこの暖かさじゃ着物もたいぶ乾いてきたんじゃねーの。…………そーいや、近頃”すえっと“着てねーよな」
「そうだねー。これからは着物に慣れなきゃならないから。て言っても毎日着てるうちにかなり馴染んできたんだけどね」
「慣れなきゃならない?」
「うん。もう現代には帰らないから。」
幸村は、食べかけていた魚を串ごとポロ、と落とした
「こないだ佐助が次のワームホールが起きる日が分かった、って教えてくれたの。……だから帰らないって返事した」
そう、先日やっと判明したのだが、既に帰らないと決めていた私はせっかく調べてくれた佐助に残る意思を伝え謝ったが「そう言うと思ってた」と笑っていた。
蓮と小梅にも知らせなければならないので今は安土へ報告に行ってくれている。
………でも考えてみれば、一生を背負って下さいって圧力かけてるみたいに捉えられるかもしれない
「あはっ、私ちょっと重い?」
刹那、抱き締められる感触が自分の体を包んでいた