第7章 『謳歌』 ※R‐18
「ほんと!?ありがとう信玄様っ!」
「なに甘やかして…………うわっ、引っ張んなって!」
目を輝かせながら桜子が幸村を引きずっていく様子を見て謙信がふん、と鼻を鳴らす
「最近めっきり鍛練に付き合わんと思っていたが、そういう事か。小娘め、色惚けしおって」
「寂しそうだな、謙信。可愛い妹を取られて」
「…………斬って捨てるぞ」
くすりと笑うと信玄は庭に降り文月の陽気を胸に吸い込み穏やかに景色を眺めていた
「あ」
河原に行く道中ーーーーー
今一番気まずい相手と遭遇してしまった。
清潔感のある髪型に結い上げ、品のある身のこなし。
(お祭りの時の、女の子………)
あの日から数週間、どうしても顔を合わすのを躊躇してしまいあの子が働いている甘味処には近寄らずにいた
「おー!志乃」
幸村が手を振ると向こうも同じ動作をしながら歩いてくる
「どうも、幸村様。……………あら、こちら……お祭りに居た方ね」
チラリと桜子を見やる
「もしかして、幸村様のーーー」
「そう、俺の」
幸があまりにも自然に答えるから私は思わず見上げた
(”俺の“…………)
頭の中で何回もリピートしては熱くなる頬を押さえていると、
志乃と呼ばれている彼女は一瞬瞼を伏せた後パッとまた真っ直ぐ私を見た
「……やっぱり。あなたを追いかけていった幸村様を見て、そうじゃないかと思っていたの。」
「あ…あの私、あの時はーーー」
「いいのよ、全然気にしてないわ。今度是非お二人で店にいらっしゃいな」
そう優しく笑みを浮かべるとお辞儀をして颯爽と去っていく。
(私、あんな態度取ったのに……。中身も素敵な人だな……)
こんな素敵女子が周りにいるのに、どうして幸は私を選んだんだろう
隣を歩く幸村をまじまじと見つめる。
「…ねぇ幸、手繋ごっか。」
「やだね。人前でそんな事出来るかよ」
「あ、また照れてる」
「照れてねーし」
いつもの掛け合いをしつつ、
二人は目的地へと足を運んだ