第7章 『謳歌』 ※R‐18
「窃盗団…………!?」
春日山城のとある一室で幸村が大きく声をあげると向かえに座る信玄が小さく頷く
「………ああ。一部の者からは通称“蜘蛛”と呼ばれているそうだが、特徴や情報を照らし合わせると……宗雲軍に反乱を起こしたのも奴等だと踏んでいる」
「聞いた事無いですよ、そんな組織」
「如何せんここ僅か数年前から現れた奴等で、知っている者はほとんどいないからな。各地で窃盗を働いては居合わせた者を虐殺している。ーーーそしてあの並みではない動き………幸も体感してるだろう」
「……ただの盗っ人じゃねぇって訳か」
戦場での屈辱を思いだし、傷の癒えた左腕を恨めしそうに掴む
「届いた報告によると現在一団は南下中らしい。………とにかく我々の領地に侵入させないことが第一だ。普段は当たり障りのない姿に扮している可能性があるため境にある城廓や関所へ警備の強化を促す」
「………また愉しませてくれるのならそやつらと戦でも始めたいんだがな」
「謙信様!戦狂いも程々にして下さいよ、ったく」
「ーーーまぁ恐らくその心配は無いかもな。やる気なら反乱を起こしたあの日にこちらに攻撃を仕掛けてた筈だ…………………ん?」
信玄が言いかけた時、障子に人影が映っているのに気がつく
「天女、どうした?」
そう微笑みながら開けると延べ竿を持った桜子が胡座をかいていた
「あ、ごめんなさい。今日は評定がお昼までって聞いてたからもうそろそろ終わるかなって……午後からは釣りに行こうって幸と決めてて」
「お前なぁ、大人しく部屋で待ってられねーのかよ。まだ終わってねーから」
呆れたように歩み寄り障子を閉めようとする幸村を信玄が手で制した
「丁度終いにするところだったんだ。いいよ、行っておいで」