第2章 一人目の主人公編 『到着』
「マジで!?じゃあそこに連れてって!」
ガクガクと肩を揺らされながら佐助が一つの提案を出した。
文を書いて状況を百合さんに伝えるというのだ。
「ふみ って誰?」と聞いたら少し呆れた顔をされた。どうやら手紙の事らしい。
返事を待ってるより直接行った方が早いと言ったのだが、もし私が百合さんを連れ戻そうとしてる一味だと知られたら信長どころか他の武将達がどういう行動に出るか……と佐助が懸念していた。私達だけじゃなく、安土城の皆にも百合さんはかなり愛されてるようだ。
(………………っそうか、ここは悪魔でもあの戦国時代……きっといつ殺されるか分からない時代だ。………………てか一味て……………)
「現代文字なら百合さんしか読めないから武将達にバレる心配も無い。蓮さんと小梅さんの事は、ここの隠密部隊に捜索を頼んでみるよ」
「……………!!ほんとに!?」
「ああ。ここの城主は俺を信頼してくれているし、きっと協力してくれるはずだ。君が現代仲間って事も伝えてある。」
少しの沈黙のあと、桜子の顔からピリピリした緊張感が解れていった。
「…………………ありがとう、佐助」
これまでの口調や態度とは裏腹な笑顔に、佐助の頬が赤く染まる。
(か……可愛い)
背中まである長い栗色の髪に、大きな薄茶色の瞳。色白で細いがしなやかな筋肉がついたメリハリのある体形。
服装はラフなTシャツにショートパンツだがパッと見、人形みたいだ。
………………いやいやこんな事考えてる場合じゃない。シッカリしろ、俺!と心の中でブツブツと唱えている矢先、
「目ぇ覚ましたのかよ、その女」
スッと静かに襖が開いたと同時に聞こえた声。
視線を声の主に移し、桜子の目が大きく見開いた。
時が止まる、ってこういう事なのかもしれない。