第6章 『心得』
日が昇り、昨夜とは一転して戦場や陣営では騒然となっていた。
「これは………………」
全く姿を現さない宗雲軍に業を煮やし陣地に攻め入ると、そこには異様な光景があった。
大多数の足軽達は口から吐瀉物を垂れ流し倒れて絶命しており
残りの者は急所をひと突きされた痕があった
そして破壊され地べたに落ちていた本陣の天幕の布地の上には、口腔から頭の後ろまで貫通した刀が刺さったままの宗雲の首が転がっていたーーーーーー
信長達との協議の結果、光秀と上杉側の密偵部隊に消えた黒装束の行方を探らせる事と敵将死亡の為この戦は表向きは終了する事に相成り、撤収準備が始まった。
「反乱………か」
「味方の軍全滅させといてこっちには何もせず立ち去るって、もう俺等と戦う気無ぇって考えだろ。怪我損だぜ、ったく………」
信玄の隣で、傷の手当てを済ませた幸村が不満を漏らすと謙信がニヤリと笑う
「事実上の勝利ではないのは口惜しいが、久々に骨のある奴と刀を交えられて充実した時を過ごせた」
ふいにキャッキャと高い声が耳に入り、見ると佐助に抱き付くおかっぱ頭の小柄な女がいた。
その後ろには背の高い長髪の女が白くて細い筒のようなものを口にくわえ紫煙をくゆらせている
「小梅さん、そろそろあっちに戻らないと。家康さんが物凄い顔で睨んでいるよ。」
「きゃはは、了解~。蓮ちゃん、行こっか」
「ああ。じゃ、またね佐助。桜子の馬鹿によろしく」
そう二人が織田の軍勢の方へ行ったのを尻目に幸村が問いかける
「あれってもしかして………」
「うん。例の桜子さんの姉とお友達。」
「片方の女、前線で暴れまくってたの見たぞ。本人だけじゃなくて周りの女共も流石ぶっとんでんなー」
桜子の日々の奇想天外な行動が頭に浮かび吹き出す。
けど、別れ際は涙目だった。
会いたい。早く
波乱に満ちた戦は終わり、
準備を整えた一行は帰路へと歩を進み出した