第2章 一人目の主人公編 『到着』
「百合さんはこの戦国時代で織田信長に恋をした。現代に戻っても彼女はずっと彼の事を想ってひたすらワームホールが現れるのを待ってたんだ……………その間、どんな気持ちだったか……………」
桜子はゆっくりと手を降ろした。
「………知ってる……でも蓮は許してない………きっと許さない……」
ぽつり、ぽつりと話し始める。
私と一緒にいた百合さんの妹ーーーー蓮と、私の姉の小梅は皆知り合い同士だ。
ある日蓮から相談を持ち掛けられ、百合さんを引き留める為に協力をする事にしたのだ。
こんな危険な時代に彼女を来させたくなかったから。
いつも優しくて大好きだった。よく皆で遊びに行ったりもした。
引き留めるのが大前提だったが、最悪タイムスリップに呑み込まれた場合の事を考えて必要な荷物をまとめて当日に挑んだ。
………時空を越えるなど半信半疑だったのだが。
「へぇ………凄い覚悟だね。現代に帰れるメドもたってないのに」
「それはあんたを脅してでも方法を聞き出すつもり。」
「はは、物騒だなぁ。…………でも百合さんは姉想いの優しい妹と良い友達をもってるんだね。彼女、愛されてるなぁ。」
(…………………………)
なんだかくすぐったいような、胸がじんわりするような気持ちが込み上げる。
………………こいつは、蓮が言っていたような人じゃないかもしれない。
「あ、ごめん。まだ重要な質問に答えてないよね。………百合さんの居場所だけど、彼女は信長様と安土城へ向かってる。タイムスリップしたあと、二人が合流して出発するところまで見届けた。以前もそこで生活していたからね。」