第6章 『心得』
戦場の一角では、幸村と佐助が交戦していた
「このままいけば恐らく俺達の勝利かもね。………あ、幸、後ろ」
幸村の背後を狙う兵に手裏剣を投げ付ける。
「おー、悪いな。それにしても何人いんだよ。しつけーな」
そう槍で目の前の騎乗主を叩き落とすと、遠くから微かに指笛のようなものが耳に届いた
「…………なんだ………?」
呼応するように様々な方向から次々に鳴り響く。
地鳴りと共に黒い装束を纏った大群が四方八方から、まるで包囲するように押し寄せる
「面白い。こうでなくては」
持ち場に居た謙信がいち早く飛び出した
美しい夕日が差す頃ーーーーーー
群がった装束兵と未だ激しい激闘を繰り広げ、優劣はどちらとも言い難い状況に転じていた
「くっ…………」
辛くも相手の刀を弾き、斬撃した幸村は肩で息をしていた
「何者なんだよこいつら…………っ」
今までの兵とは違い卓越した腕捌きだ。
訓練に訓練を重ねた、玄人の動き。
「幸、来るぞ」
近距離で闘っている信玄の声の方へ体を反転させると、一騎を先頭に小数の部隊がこちらへ向かってきていた
「御館様、ここは俺が!」
信玄の前に出張ると、十文字槍を構えた
頭から口元まで覆われた頭巾、目と目の間に交差した帯……全身が漆黒の装束なのは他の者と同じだが、一番前を駆けてくる男は格が違うーーーーーー
経験上、幸村はそう肌で感じていた
高い衝撃音が、槍と相手が抜いた刀から発せられる
「……………………」
互いに弾き合うと攻撃と防御をそれぞれ駆使し二人がぶつかり合う
(こいつ………強ぇ……!!)
荒い息遣いで睨み付け、間合いを取る。
男の目が三日月のような形で笑みを作ると、あとは一瞬の出来事なはずがスローモーションのように幸村は感じた
自分の左腕に一撃が放たれるまでの、その所作が