第6章 『心得』
戦地では怒号や呻き声が混沌とし、織田・上杉・武田軍の優勢で事は進んでいた
「………つまらん。腕の立つ者はおらんのか。数だけは一人前だが」
しなやかな動きで迫る敵兵を斬り捨てる謙信の近くでは剛腕を降り下ろし周囲を一掃する信玄がいる
「だが織田の方には少しマシな奴が宛がわれてるようだ。………まさか“あいつ”がやられるとは……」
「ふん……せいぜい天幕の中から我々の勝利を見届けるがいい」
飛び掛かる矢を払い二人は蹄を走らせた
敵方の本陣では、
宗雲が床几にどっしりと深く座り扇子を広げていた
「躍れ躍れ………しかと体力を削ぎ落とすのだ」
そう扇いでいると、一人の侍従が現れ宗雲に耳打ちをする
「………ふ………、“蜘蛛”達が到着したか。奴等を動かすのにいくら金をつぎ込んだか………幾人かは既に織田側に紛れさせたが流石に良い仕事をしておる」
ニィ、とくすんだ歯を剥き出し下劣に笑む。
「顕如様……この宗雲、是が非でも貴方の悲願を叶えてみせようぞ………………。おい、蜘蛛には頃合いを見て攻め込めと伝えておけ」
「御意」
静かに、迅速に、影は忍び寄る