第6章 『心得』
春日山城ーーーーー
壁に背を付け板張りの上に足を投げ出し、門の方へ視線を向けたままの桜子を遠巻きから女中達が心配そうに見つめている
「桜子様もうずっと出入口の所で座ったままだわ………。食事を出してもあまり召し上がらないし、大丈夫かしら………」
………………あれから何日過ぎたのだろう
生活に必要最低限な行為以外は何もする気が起きず、出立を見送ったあとから今まで私はこうして玄関先で腰を下ろし毎日を過ごしている。
「いい加減奥へ入りなさいませ。城の護衛が居るとはいえこのような所で呆けているのは身の安全に関わります」
「いい。…………ここにいる」
何度も周りから注意されたが動く気は起きなかった。
ここで待ち続けて、帰ってきたら真っ先に無事を確認するんだ。
もう目的地には着いてるのか、それとも戦いは始まっているのか、何も分からない
いつ終わるの?
いつ帰ってくるの?
幸は今どうなってる………………
傍らに置かれた膳には手の付けられていない料理が既に乾ききっていた。