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【イケメン戦国】戦国舞花録

第26章 『気配』




ちっ、嫌味の通じない奴め。

何がそんなに可笑しいのか、天を仰ぎ高らかに爆笑していて……
ダメージを与え損じた悔しさが煮え滾り、荒々しく酒を呷っていると。
織田は笑いの合間に ふと、物語の一文のような語りを挟んだ。


「五島黒の馬首が向かうところ、戦えば必ず勝ち攻めれば必ず取るーーー」

「え?」

「戦に関わった者の間で囁かれている口伝えだ。そして俺もそう実感している」


いつだったか伊達が言ってた。
戦の時は常に愛馬の五島黒に跨がり出撃する、と。

私のみならず周囲の誰もが肌で感じている、あいつの強さーーー

言葉の真意、要するにそれは。
情にほだされた訳でもなく、甘やかしてる訳でもない。
絶対的な信頼を置いているのだ。
“伊達政宗”という男に。

信頼は結果に繋がり、統率力を強固なものにしていく。

憎き相手だというのに、図らずも感心してしまったではないか。
……畜生。


「しかし……この俺に説教じみた戒めを説くとは面白い事この上無い。腹が捩れるわ。
どうだ、一緒に天下を目指すか?」

「マジで勘弁して。
だいたいねぇ、あんたの笑いのツボおかしいからっ」

「まじ、とは何だ」


盃片手に論争しているとそのうち、石田と変な踊りを踊りながら小梅がこちらへやってきて。
何を言うのかと思いきや……


「わぁっ、二人とも仲良しさんになって良かったねぇ〜。なんてったって将来は義兄妹になるんだから」

「……はぁ!?
仲良くもないし、ましてや兄妹になんて……」

「だってだってぇ、信長様と百合先輩が結婚したらそういう事になるでしょう?
そうだよねっ、三成くん」


話を振られた石田は「そうですねぇ」なんて呑気な笑顔で答えてる。
……織田と私が義理の兄妹?
有り得ない。
無理無理無理!!


「ちょっと、私は絶対に認めないからね!!」


結婚というワードが琴線に触れた姉貴は頬を赤らめ嬉しそうに恥じらっていて、織田と熱い視線を送り合う始末。
私の魂の叫びをまるで聞いちゃいない。
この胃がもたれそうな甘ったるい雰囲気に嫌気が差し、ぶち壊してやろうとしたのだけれど……

先を越されてしまった。
そう、べろべろに酔っ払った秀吉が突如乱入してきたのだ。



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