• テキストサイズ

【イケメン戦国】戦国舞花録

第26章 『気配』




「律儀じゃねぇか、全員に返事を書くなんて」

「こういうのははっきり断らなきゃ後々面倒だしね。いい加減目を覚ましてもらわないと」

「なるほど。
いやーしっかし、すげぇよなこの量…せっかくだから試しに誰か抱いてやれ。お前ならやれる」

「冗談よして」


ふざけた戯言を投げ合いながら、文机に向かい筆を走らせていると。
障子の隙間からそろりと入ってくる照月の姿が視界に映った。
いつもみたいに飛びついてくると思いきや、明らかに私を避けて伊達の背中へ隠れ……
顔を半分だけ出して、じぃっとこちらを睨みつけている。


「ふっ、嫉妬だな」

「嫉妬?」

「お前がウリの匂いつけてるからいじけてるんだ。なぁ?照月」


そう揶揄まじりに撫でられると、不機嫌な表情でそっぽを向く仕草。
……なにそれ。……可愛い。

しばし頑なな態度だったが、
おいで、と何度か呼んでいるとそのうちおずおずと近づいてきた。
私の膝上を陣取り、自分の匂いを上塗りするように頬を擦り寄せてくる。
……可愛すぎだろ。
ああ、あの追っかけ隊の連中もふわっふわの可愛い動物だったら存分に構ってやるのにな。


「ところであんた、随分まったりしてるけど今日はもう仕事ない訳?」

「ああ、ほとんど済ませたからな。後で書簡に目を通すくらいだ。
さっきからずっと明日の宴に出す料理を思案してる」

「さすが料理のことになると熱心だねぇ」

「お前も考えろよ。手伝え」

「はっ!?なんで私まで……
……別にいいけどさ」


それからもこんな調子で、
ああだこうだと互いに案を出しながら
甘えてくる照月の相手をして。
久しぶりに、のんびりとした安穏なひとときを過ごしていたんだ。
着々と“気配”は忍び寄っているというのにーーー。



/ 493ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp