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【イケメン戦国】戦国舞花録

第25章 『美学』



縦横無尽に駆け抜け、刀を振るう。
一見自分勝手に動いているように思われるだろうが、要所要所ではしっかりと周りをサポートしていて。
活を入れるかの如く掛け声を轟かせれば、部下達の士気も上がり一体感が生まれる。
広い視野を持つ、鋭い隻眼。
その先に目指すものはきっと、こんな血生臭い争いなんかじゃない。

“身分関係なく誰でも美味い飯が食える、豊かな世にーーー”

いつだか褥でそんな話をしていた。
勝者が未来をつくる時代…
理想の未来図を実現させる為には、負ける訳にはいかない。
苦境の中でも戦い続ける底知れぬ力は、そういった揺るぎない志が源となっているのだろう。
私が生きてきた現代の平和な日常は、こうして古くから紡がれてきた願いによってもたらされたのだと思うと胸の奥が熱くなる。

そして一進一退の末…


「奴等が退いていくぞー!」


陣屋や天幕などへ奇襲を仕掛けていた装束兵の統率者が織田軍に打ち敗れたとの情報が入ると、兵達の動きが一変。頭を失った動揺なのか、途端に攻撃態勢が乱れ…
ついには、蜘蛛の子を散らしたように撤退していった。
去る間際に放たれた火薬入りの竹筒があちこちで爆発し足止めを喰らった為奴等を逃してしまったが、その後も大元の敵方である宗雲の軍勢と戦いを続行。
戦況はこちら側が優勢のまま、夕刻まで長引き…
薄暗くなる前に両軍とも一旦引き上げる事になった。


「私の失態が招いた怪我…なんと詫びればいいのか」

「こんな傷たいした事ねぇし詫びも必要ねぇ。俺は役目を果たしただけだ。お前は明日に備えて休んでおけ」

「政宗様…」


疲れきった兵達が溢れる陣営内。
今にも切腹しかねないほど取り乱す家臣の与次郎を宥めた伊達は、何事も無かったかのように颯爽と馬から降りると救護台へ寝そべった。
明日の勝利を確信しているのか、晴々とした表情で目を瞑っていて。
傍らで付き添っていた私は、鎧を外してやり汚れた包帯を解きながら安堵の溜息を吐いた。


「ほんっと…滅茶苦茶な男だね、あんたは」

「よく言われる」

「無茶ばかりしてそのうち死んでも知らないから」

「はいはい。ったくお前なぁ、もっと労れよ」

「は?充分労ってるでしょ、…ーーー」


反論しかけた瞬間ーーー
頭を引き寄せられ、唇ごと言葉を奪われて。
唐突な出来事に周囲がザワつく中、
伊達は悪戯に笑っていた。

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