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【イケメン戦国】戦国舞花録

第25章 『美学』




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五島黒が力強く疾駆すればするほど、
肢体から伝わる振動が凄まじい。
背上に跨がった私と伊達は、数多なる敵兵の妨害をかわしていき……
ついに最前線の舞台へ躍り出た。


「いちだんと騒々しいね此処は。汗臭い連中ばっかり」

「そりゃそうだ、一番の激戦地だからな。
蔓延してんのは汗の臭いだけじゃねぇさ」


ぶつかり合う刃、飛び盛る無数の矢、
怒号、呻き……
皆一様に、汗を拭う暇さえ無いほど我武者羅に戦っていて。
敗北した者は無惨に地面へ倒れ、押し寄せる兵達に踏みつけられていき。
垂れ流れる血と臓器、排泄物から放たれるなんとも言い難い不快な臭気が鼻を刺激する。

“命の保障なんてどこにもねぇ”
秀吉が言ってた通り、いやそれ以上の惨状ーーー


「怖気づいたか?」

「……まさか。みくびらないで」

「ふ、そうでなきゃな。
さぁここからが本番だ。ついてこい」


今更退けるもんか。
この男の信念とやらを見届けるって決めたんだから。
伊達管轄の騎馬隊と合流した私達は、潔く渦中へ乱入した。

息を吹き返したように爆発的な伊達の猛攻が始まり、過熱する周辺一体ーーー
負傷しているなんて微塵も感じさせない卓越した太刀捌きは、相手だけではなく家臣をも圧倒させる。
温存していた力を遺憾なく発揮しているようだ。

私はというと、傍らでひたすら補助に徹していた。
あくまでも奴が主力。同乗しているこちらが下手に大きく動けば戦いの妨げになってしまう。
……そう。
大人しくさり気なく、適切な補助をひたすらに。
小ぢんまりと、大人しく……


「おいっ、女が出張ってくるな!でかい図体しやがって」 


……ーーー撤回。
ひたすら大人しく、なんて私には無理。

野次を飛ばしながら向かってくる敵兵を迎え討ち、顔面を思い切り蹴りつけてやった。
地に伏せる姿を視界の端で捉え、ざまあみろと呟いた……その時。


「貴様という女は……
男を足蹴にする様が実によく似合う」




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