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【イケメン戦国】戦国舞花録

第25章 『美学』




それぞれの軍旗を目印に春日山勢の面々を観察しようとするも、ここからじゃ遠くて見えにくい。しかし、高まる士気と緊迫感は十二分に伝わってくる。
暫し睨み合った後、勇ましく大きな鬨の声が上がり……
いざ、戦いの幕が開けた。


「恐るるなかれ!進め進め!!」
「押し出せぇぇぇーーー!!」


あちこちから怒号が発せられ、地を蹴る音や武器の接触音が激しく鳴り響く。
ーーーもう“ドラマみたい”なんて悠長に構えてる場合じゃない。作りものの映像なんかとは桁違い、比にならないほどの鬼気迫る臨場感。
これが、リアルなんだ。
こうして離れた場所で待機していても、心は休まらない。安全な場所はどこにも無い。
油断は禁物だと改めて悟った私は、腰に巻きつけてある紐……“下緒”をきつく結び直した。
下緒の先に繋がっているのは、護身用に貸与された日本刀。付近には火縄銃をはじめ多くの武器が備わっている。
たくさんの護衛がついてくれているけれど、自分の身は自分で守るしかないーーー

ただ、自己保身だけに全力を注いでりゃいいってもんでもない。
戦いが激化するにつれ負傷者が続々と救護天幕へ運ばれてきて、慌ただしくなっていく現場。
黙って傍観してる訳にはいかず、他の者達と一緒に出来る限りの手当を施していた。

血の臭い、呻き声………
重々しく淀んだ空間の中、懸命に処置を進めていると。
天幕の外が騒がしくなり、突如出入口の布地が捲られた。日の光を背にして現れたのは三つの人影。
秀吉と、なにやら見覚えのある男、
そしてその二人に両脇を抱えられているのは、ーーー


「手当を!急いで手当を頼む!
政宗様が………っ!!」



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