第6章 『心得』
「信玄様。…………愉しそうですね。」
数人の女をはべらせた信玄がにこやかに通りを歩いて来ていた。
「さ、君達今日はここまでだよ。すごく残念だけど」
「え~、そんなぁ~」
「もっと一緒にいましょうよぉ」
せがむ女達をやんわりと退散させると、桜子の隣に腰を下ろす
「……なんか私睨まれたんですけど」
「はは、それは天女があまりにも可愛いから嫉妬してるんだ」
そう膝に乗せようとする手の甲をつねってやった。
いつもの調子で始まった、と思っていると
スッと信玄が真剣な眼差しに変わった
「おふざけはまた今度にして、ちょっと真面目な話……いいかな?」
「?…………はい」
「幸と何があったかは無理には聞かないが…………もし次に行動を起こすとしたら、今はまだやめてくれないか。戦の前は精神を集中させてやりたいんだ」
手から湯呑みが滑り落ち、
地面で割れた
「…………最後………、なんて言っ………」
「戦が、始まる」