第24章 『融氷』
「お前って奴ぁ……ぷっ、くくく……」
「なにが可笑しいの?不愉快」
込み上げる笑いを抑えられず肩を震わせていると、怪訝に眉を顰めた蓮が更に詰め寄ってくる。
振動で危うく落ちそうになっていた茶器を畳へ置くと反対の手に抱いていたウリもそこに降り立ち、正反対な俺達の表情をそれぞれ見比べていた。
「随分回りくどいこと言って……
要はもっとウリに構いたいんだろ」
「…は…はぁ?勘違いしないでよ。誰がそんな猿……」
「いーや、図星だろう。
躾と称して堂々と触ろうっていう算段か……ははっ、素直じゃねーなぁ」
「………っ、」
「ところでいつまでそんなはしたない格好してんだ。貸してやった羽織も放ったらかしだし……ほら、替えの着物持ってきてやったから着ろ」
ことごとく核心を突かれ、悔しいのか恥ずかしいのか………
ほのかに赤らんだ顔を引き攣らせ、
差し出してやった着物を乱暴に掠め取る。
ふっ とまたひとつ笑みを漏らした俺は座布団に腰を下ろし、茶の準備を始めた。
ーーーまったくもって難解な性分だな。
ウリを気に入ったのなら素直に打ち明けてくれればいいものを、わざと悪態をつく芝居までするなんて。
本当困った捻くれ者ーーー
「でも、なーんか憎めないんだよなぁ。
なぁ?ウリ」
急須から湯呑みへ茶を注ぎながら問いかけると、その様子をジッと眺めていたウリがこちらを見上げきょとんと首を傾げる。
ぶつぶつと文句を垂れながら着付けている蓮を尻目に、俺はそんなことを思っていた。