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【イケメン戦国】戦国舞花録

第24章 『融氷』




風に揺れる白い布地が目に映る。
湿った頭髪を覆う、染みひとつ無い清潔な手拭。そして、その上からは。
大きな手の平が置かれている感触があった。


「………何の真似?」

「これで拭け。雫が垂れてる」


冷たく振り払ってやったのに、その手はまた頭の上に戻ってきて髪の水分を拭い始める。
ーーーさっきの一件は誰から見ても、明らかに私が悪者。実際そうだし。
だから、真っ先に咎めてくると思ったのに……
予想外の行動をされ、正直戸惑っていた。


「余計な気遣いは結構。放っといて」

「放っとけない」


奴から離れようと歩みを早めていた自分の足が、勝手にぴたりと止まるーーー


「そんな格好で城へ帰って……
百合に見つかったらどう説明する気だ?」

「………。
川に落ちたとでも言い訳しとく」

「苦しい言い訳だな」


確かに、川へ落ちたにしては不自然な濡れ方だよな。
川岸でつまずいたから、とか
足が滑ったから、とか。
無理矢理間抜けな作り話をしても、姉には嘘を見破られるかもしれない。


「知られたくないんだろ?百合には」

「………」

「俺の御殿に来い。似たような柄の着物貸してやるから。ついでに髪も乾かしていけ」

「………
どうしても、って言うなら借りてやってもいいけど」

「〜〜〜……ったく……
どうしても、だ。来い」


視線をそちらへやる事が出来ず、
俯いたまま、小さく頷く。
たぶん、隣には
呆れたように笑ってこちらを見つめている、奴の顔があるのだろう。

食材が包んである風呂敷を、さり気なく奪った豊臣は。
それを脇に抱え、御殿への道のりを歩き出す。
私の頭の上には、未だぬくもりが置かれていた。・・・・



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