第24章 『融氷』
ーーーむしゃくしゃ、する。
必要以上に関わらずに済むんだからいいじゃないか、むしろ楽だろ。
なのにどうしてこんなに気分が荒むんだ。
本当、不可解で気色が悪い。
乱雑な足取りで城下町を闊歩し、
青物屋を目指していると。
談笑する男共が目の前をだらだらと歩いていて、邪魔臭いことこのうえない。
「ーーーんで、そん時の夜鷹ときたら醜女の癖によぉ、締まりだけは良いんだ」
「ぎゃはは、顔に風呂敷でも被せとけ」
とてつもなく癇に障る、下品な顔つきと下品な笑い声。
背の低い小男二人組で、どちらも冴えないルックスーーーこういう奴等に限って偉そうに女遊びをネタにする。まずは鏡で自分の顔見てみろってんだ。
………胸糞悪い話しやがって。
「ちょっとあんた等、邪魔」
男共の背後へ低い声音を投げ掛けてやると、
すぐさま怒りを露わにした二人がこちらに詰め寄ってきた。
「ぁあ!?てめぇ、なんて言っ……」
「聞こえない?邪魔だっつってんの。
とっとと道を開けな」
「…………っっ、」
目で殺す、とでも称しておこうか。
高い位置から殺気を込めた眼差しで見下ろせば、その差は軽く十センチを越えていてーーー
威圧的な凄みに怯んだのか、男共は小声で情けない負け惜しみを呟きながらすごすごと立ち去っていった。
背丈だけじゃなく気も声も小さいんだな、救いようのない奴等だ。
「下衆野郎が………」
苛々は継続中だが、視界から不愉快なものが消えたお陰で幾らか気分がマシなった気がした。
それからは予定通り青物屋や魚屋で食材を購入し、のんびりと帰路に就いていた。の、だけれど。
不愉快な出来事は、次から次へとやってくる。