第24章 『融氷』
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「…………」
無言で構えたまま狙いを定め、真っ直ぐ前を見据える。
耳に聞こえるのは、
遠くで鍛錬に励む男達の掛け声と、微かな風の音。
全神経を集中させ、
自分なりに都合の良いタイミングを計ると……
引き金に当てている指にグッと力を込めた。
瞬間、響き渡る銃声とーーー
舞い上がる白い硝煙。
「ちっ、外したか……」
数十メートル先にある、黒丸の的よりも少しズレた位置に弾丸の貫通痕を確認した私は、悔し紛れに舌打ちをした。
そしてその傍らに立つのは………
「ーーー惜しかったな。
だが着実に命中率が上がってきている。大したものだ、この短期間で」
独特な存在感を放ち、どこか掴みどころの無い男ーーー明智光秀。
マツエク要らずの長い下睫毛は今日も健在だな……なんて思いつつ「どーも」と一応礼を言っておいた。
そう。
私達は現在、火縄銃による射撃訓練の真っ只中。
砲術に長けているという明智に指導してもらい、とりあえず基本的な扱い方は習得した。あとは如何に上手く照準を合わせられるかだ。
男共と一緒になって戦う訳ではないが、いざという時の為にある程度の技術は身につけておかなきゃ。
「弓矢の難しさに比べたらこっちの方が全然楽なんだけどねぇ。
もっと上達するには慣れるしかないか……
あ、それとも。
的に織田の似顔絵でも貼り付ければいいのかな」
「っくく、秀吉が見たら怒り狂うぞ。
ただでさえ最近機嫌を損ねているというのに」
「なにそれ、あの男ほんと鬱陶し……」
「お前達が戦場へ同行することに未だ猛反対しているらしい」