第24章 『融氷』
ふざけた戯れもそこそこに、
お待ちかねの料理を卓上に並べると。
周囲からワッと歓喜の声が上がった。
櫃の中にはーーー
味付けされた様々な具の他に、ほぐした焼き鮭が散りばめられ艶々としたイクラが大量に盛られた酢飯。
見た目も華やかなちらし寿司だ。
大皿には海老や烏賊、南瓜や大葉など……
質の良い海鮮物と野菜がカラリと揚げられた天ぷらがひしめいていて、
あとはお吸い物と漬物でさっぱりと。
思わず生唾を飲み込んでしまうほど、十二分に食欲をそそるご馳走の数々ーーー
「美味しーいっ、政宗さまのご飯大好き!
今日は蓮さまも作ってくれたんだね!」
「ああ。おっかねぇツラしてるけどなかなかやるんだ、こいつ。
たんと食え。まだまだあるからな」
席に着いた子ども達はすぐさま競うように料理を頬張っていて。それぞれの食器によそわれた料理はあっという間に無くなっていき、我先にとおかわりが殺到する。
「政宗様、蓮様。なんとお礼を申し上げたらいいのか……」
「面上げろよ、正仲。美味そうに食うこいつ等の顔見られるならそれだけで釣りが返ってくるってもんだ」
深々と頭を下げる正仲をやんわりと制し、豪快に笑う伊達ーーー
嬉しそうな顔しちゃって。
つられてこっちまで表情が綻んでしまいそうになるのを抑えつつ、至って真顔を保ち続ける。
「ここの後片付けは私がやっとくから、あんたは先に御殿へ帰ったら?仕事溜まってるんでしょ」
「………やけに気が利くじゃねぇか。
悪いな、頼む」
なんだか心地が良いので、なけなしの思い遣りをフル活用してやった。
ただの気まぐれだけどねーーーなんて心の中で言葉を付け足し、伊達を見送った私は。
去っていく後ろ姿を鋭く睨みつけている藤吉の眼差しには気付かずにいた。