第24章 『融氷』
「政宗さまだ!」
「政宗さまぁ〜!!」
出来上がった料理の品々を手に、寺院へ赴くと。
広間にて今か今かと待ちわびていた子ども達が喜び勇んで集まってくる。
よほど楽しみにしていたのか、皆一様に瞳を輝かせ伊達を見上げていた。
一方、少し離れたところでは。
皆の輪に加わらず、ふてぶてしく膳の前で胡座を掻く少年ーーー藤吉がいる。
態度は以前のままだが、外見は見違えたように変わっていた。
「へー、スッキリしたじゃん」
「……さっき正仲が散髪してくれたんだ」
伸びてボサボサだった髪は短く整えられており、着物も新調している。
あれ以来、正仲との距離が縮まり多少は素直に物事を聞き入れるようになったのだ。あの反抗心の塊だったガキんちょが……なんたる進歩。
もっと近くで観察してみようと歩み寄った私はそこへしゃがみ、両手で藤吉の頬を鷲掴んだ。
「こないだから思ってたんだけどさ、結構整った顔立ちしてんね。将来良い男になるよ、あんた」
「なっ……!?
おいっ、寄るな!そんなに顔近付けんなよ!
風呂だってもう一緒に入らないからな!」
「なに一丁前に照れてんの?マセガキ」
ーーーつい先日。
町の子どもと大喧嘩し、泥だらけになって帰ってきた藤吉。見兼ねた私が湯殿へ連れていき、身体を洗ってやったのだが………
女の裸体がとてつもなく衝撃的だったみたいで。
以後、寺で会うたびに“もうお前とは風呂に入らない”を連呼するようになった。
それは嫌悪、というよりは
恥じらい、の感情からくるものらしく。
今もこうして
かぁっ、と顔を赤らめながら私を押し退けようとしてくる。
子どもならではの、なんとも初々しい反応。
すると、すかさず伊達も面白がって割り込んできた。
「蓮、そいつはお前の新しい男か?」
「そうだよ。可愛いでしょ」
「っくく、若いの捕まえたなぁ」
二人揃って悪ノリしていると、藤吉は更に顔面を真っ赤に染め「違うっつってんだろ!」なんて必死に否定していて……
その様子が可愛くて、つい揶揄ってしまう。
もし自分に弟がいたらこいいう感じなのだろうかーーー