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【イケメン戦国】戦国舞花録

第24章 『融氷』





頃合いを見計らい、乗馬の訓練を終えると。
五島黒を厩舎に戻し、あとは御殿へ帰るのだろうと思いきや………
城の厨へ向かうと言い出した伊達は、私の腕を掴み強引に連行しようとしていた。


「ついでだ、お前も手伝え」

「手伝う、って……
あっ、ちょっと……」


こっちの返事などお構い無しにぐいぐいと引っ張られるがまま、玄関口を通り過ぎる。
夕餉の支度をするのだと思い当たったが、今夜は宴や会合が行われる予定など聞いてない。他の武将達は各々の御殿で食事を摂るはず。
まさか織田ひとりだけの為に料理を………?
そうであってもおかしくはない話だ。なにせ“天下の信長様”だもんね。急遽命じられたのかもしれないーーー


「あらっ、政宗様!これからここをお使いに?」

「ああ。今日は十日に一度の“あれ”だからな」

「本当にお優しいですね、政宗様は。
どうぞ、奥の方へ」


厨へ入ると。
料理番の女中数人がせっせと夕餉支度に励んでいる最中で、快く招かれた私達は奥側の空いているスペースへと移動した。
清潔な流し台や様々な調理器具が完備されていて、土間にはいくつもの竈が設置してある。
女中の仕事の一環で日頃から下ごしらえ程度なら補佐しているけれど、主力として携わったことは無い。
しかもこの男と協力して作るなんて、初めての試み。

だが……
周りを一瞥してみると、織田へ出す料理は既に女中達が手掛けている。
一体全体、伊達は誰の為に作ろうとしているのか。
“十日に一度のあれ”とは?


「ねぇ。
今夜はお偉い客でも来る訳?」

「いや」

「じゃあ、なんで……」

「寺のガキ共に食わせる為だ」



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