第24章 『融氷』
近々、甲斐にて始まるという戦。
“顕如”とかいう男の意思を継ぐ者が現れたとかなんとか………
詳しくはよく分からないが、単なる小競り合いではなく大きな規模の戦になるようだ。
そこへ一緒に行く、だと?
「…………
…………
…………
はあぁぁぁぁぁっ!?」
思いのほか素っ頓狂な声が出てしまい、武将達の注目が一斉にこちらへ集まった。
邪魔するなと言わんばかりにキッと睨みつける豊臣と徳川の視線が刺さる………
が、気にしてる場合じゃない。
「なっ……何なのそれ……
あんた頭おかしいんじゃないの!?」
「おかしくないよぉ〜。
せっかく家康が活躍するんだから近くで応援しないと。先輩と蓮ちゃんも一緒に行こう!」
「…………」
唖然、呆然、愕然ーーー
どの言葉が当て嵌まるのか。
だらしなく開いた口が塞がらずにいた。
応援、って………
スポーツ観戦じゃあるまいし。
命の保障が無い危険地帯へ行くなんてどうかしてる、と必死で引き止めようとするも。
いくら説得しても全く聞く耳を持とうとせず、うきうきと勝手に盛り上がってる。
この様子じゃ、例え力づくで抑えてもあの手この手を使って戦場へ乗り込むだろう。
行きたきゃ一人で行けばいいーーーそう言ってやりたいけど、事が事なだけに心配だ。しかし姉貴まで一緒に行かせる訳にはいかないし………
………………
「家康に御守りと羽織作ってあげようかな〜。王子様らしく衿元にフリルつけたりして……
流石に白タイツは怒られるかな?でも似合うよ絶対……ふふふっ」
なにやら妄想に浸り始めた小梅は一旦放っておき、意を決した私は武将達の顔をひとつひとつ見渡した。
「姉は城に置いていく。
そして戦場へは、小梅と私が同行するから宜しくね。……以上。
文句ある?」