第24章 『融氷』
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ーーーある日の朝。
安土城、大広間にて。
両脇にはお馴染みの武将達がずらりと姿勢を正していて、上座にはいつも通りあの男・織田信長が、脚を崩して悠然と座っている。
各々真剣な面持ちで主君の話に耳を傾け、積極的に意見を交わす………
そう、今ここでは軍議が行われている真っ最中だ。
戦乱の世で闘う男達による大事な話し合いの場に、何故か姉をはじめ私と小梅も同席させられていた。
………場違いにも程があるだろう。
「ちょっと姉貴、なんで関係のない私等までこんなとこに引っ張り出されなきゃいけないの?怠いんだけど」
「う〜ん……私も分からないなぁ。
今回は験担ぎで戦場に連れていかれる訳でも無さそうだし……」
軍議の為今日ばかりは織田と共に上座に座ることを遠慮し、私の隣に収まっていた姉に小声で尋ねてみるも、何の事情も知らないらしく首を捻るばかりで。
この退屈な時間はいつまで続くのかとあくびをしていたら………
姉の肩越しに、小梅がひょこっと顔を覗かせてきた。
「えへへっ、私が信長様に頼んだんだよ。軍議に同席させて〜、って」
「……はぁ?なんで」
謎の勝負以来、すっかり織田と打ち解け
気軽に頼み事も出来る仲だという。
早々にトップの人間を味方にしてしまうという計算高く強かな女だが、才能でもある。
しかし、どうしてそんなことを頼んだのだろうと疑問に思っていると………
小梅は、無邪気な幼子のようににっこり微笑んだ。
「私もみんなと一緒に行くの。戦場へ」