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【イケメン戦国】戦国舞花録

第23章 『理由』 ※微R18






そんな事があったからか、
父だけじゃなくそこらの通行人や教師、同級生すらも。
周囲の男共が皆疑わしく思えて………
恨めしげに、蔑むような目を向けるようになっていったのだ。

中学に上がってから一年程が過ぎ、既に刹那的な男遊びを覚えていた私は剣道部を辞めた。
同じ部だった桜子がしつこく引き止めてきたが決断を覆すこと無く部活動を断ち切って、遊びへ繰り出す日々ーーー。


『せめて蓮が大学を卒業するまでは……』

『………ああ、そうだな』


時は流れ………
大学に入ったばかりの頃。
夜中に偶然立ち聞きしてしまった、両親の会話。
居間を仕切っているドアの磨り硝子から漏れた光が足元に当たり、影が出来ていた。

なぁんだ、結局それか。
どうやら私に気を遣って離縁を先延ばしにしてくれているらしい。ご親切な人達だよ、まったく。ーーー


ーーー虫唾が走るカウントダウンだ。







『テキーラ。ショットで』


カウンター越しにそう気怠く頼み、手慣れた仕草で煙草に火を点ける。
あのあと衝動的に家を出て、馴染みの店に訪れた私は阿呆みたく酒を煽っていた。
酔いたいのに酔えない、つまらない自分の体質に苛々する。

吐いた煙の向こう側には、数人の客の姿。
仲間同士で楽しげに騒ぐ者や、一人きりで静かに嗜む者ーーーもちろん女も混ざっているのに、何故か男ばかりに視線がいく。

…………
お前も、お前も、そこのお前も。
その笑顔の裏にはどうせ卑しい本性を隠してんだろ?
己の欲の為ならいつだって裏切るんだ。
私は騙されない。信じない。
絶対に。


『…………』


ふと、
ひとつ席を空けた先に座っている男を見やる。
恐らく歳は三十前後だろうか。
純朴そうな……だけど端正な顔立ち。
きちんとした身なりで、清潔感もある。

……ふーん。
へーえ。
丁度、良いかもね。
このどうしようもなく、やるせない憤りを処理するにはーーー


『ーーーねぇ、おにーさん。
私と遊ぼうよ』


隣に腰を下ろし、ストレートに誘惑を仕掛けてみる。
睫毛に触れて鬱陶しい前髪を掻き上げると、相手の左薬指に光るものが見えて………

唇に弧を描き、皮肉な笑みを浮かべた私は。
まんまと誘いに乗ってきたそいつの手を引き、店を出たーーー



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