第23章 『理由』 ※微R18
『蓮ー、どうしたの?ご飯出来たよ?』
『……いらない』
今日母は夜遅くまで仕事なので、夕飯の支度を担っていた姉が催促に訪れた。
ドアをノックされるも、軽く返事したきり見向きもせずにベッドの中に潜り込んでいた私は。
諦めて階段を降りていく足音を聞きながら昼間の出来事を繰り返し繰り返し脳内に映し出していた。
姉には言えない。言いたくない。
他人の空似ならどんなに良かったかと現実逃避に陥り、次の日もその次の日も仮病を使い学校を休んだ。
そして、一週間が過ぎーーー
約束通り土産を手に持って父が“出張”から帰ってきた。
きゃっきゃと喜び駆け寄っていく姉とは対照的に、私は微動だに出来ずに立ちすくんだまま。ご機嫌取りの為に買ってきたのであろう洒落たスイーツが憎らしく見えた。
『どうした?蓮』
いつもの、笑顔。
何事も無かったかのように、平然と………
あの子にも同じように笑いかけていたよね。
そうやって、これからも私達を欺いていくつもりなの?………
嘘つき。
嘘つき嘘つき。……裏切り者!!
それは怒りなのか悲しみなのか、
自分でも分からない。
ただ、ひどく冷めた感情が心を覆い尽くしていくのを感じた。涙のひとつさえも、出やしない程に。
ーーーその日以来距離を置くようになり、話し掛けられても適当に返答するのみ。目も合わせなかった。
強い拒絶反応を示す私の態度を反抗期だと勘違いした父はあれこれと解決策を試みてたようだが、そんなものは煩わしいだけで。
為す術無く、すれ違う毎日が続き………
徐々に、年々と、家族としての関わりがほぼ皆無に等しい生活を送るようになっていった。
どうしても、許せなかったんだ。