第23章 『理由』 ※微R18
二十代くらいだろうか。うちの母よりも若いことは確かだ。
艶々とした綺麗な髪を靡かせる、朗らかで可愛らしい女の人。
互いに目を合わせては笑みを零し、親しげに会話を楽しんでいて………友人同士とは表現し難い雰囲気だと子どもながらに感じた。
すると、そんな二人の足元ーーーその間から、幼い姿がひょこっと現れて。
刹那、耳に届いたのは。
『パパ、ご飯美味しかったね!また連れてってね!』
『おう、また行こうな。次は何食べたい?』
『えーっとねぇ、どうしようかなぁ……』
まだ小学校にも上がってないような、その小さな女の子はわくわくと瞳を輝かせて父を見上げている。
そう、私の父を。………
………………
…………
……
………は?
なに、それ?
分からない、全然意味が分からない。
その人はあんたのパパじゃない、うちの……私の、お父さんなんだけど。
ねぇ、
何 を 言 っ て い る の?
仲睦まじい親子ーーーそんな言葉がピッタリな三人はこれから何処へ行くのやら、私とは逆の進行方向へ歩いていく。
なんだかそこだけが、とても穏やかな空間に包まれているように見えて………
自転車の車輪を止めたまま。様々なものが頭の中を渦巻き動揺を隠せずにいた私は、ハンドルをUターンさせてペダルを思いきり踏み込んだ。
『……やっぱ私、帰る』
『えっ!?あ、ちょっと……』
もう、遊びどころではなく。
来た道を引き返し、スピードを上げる。
後ろでは唐突な私の行動に納得いかない様子の桜子が喚いているけれど、それよりも自分の心臓の音の方が大きく聞こえた。