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【イケメン戦国】戦国舞花録

第23章 『理由』 ※微R18






ある日の朝ーーー


『え〜、次は一週間も帰ってこれないの?』

『ごめんな。でも一週間なんてあっという間だ。お土産買ってきてやるから良い子で待ってろよ?』

『そっかぁ……うん、分かった』


父は普段から出張で家を空けることが多く、今回もまた暫しの別れ。
見慣れているスーツ姿……それは格好良いなと思う反面、寂しさの象徴でもある。
ぽんぽん、と頭を弾いたあと離れていく大きな手の平を名残惜しく感じながらも、遠ざかる背中を見送った。

ーーー今日は、開校記念日で平日休み。
時計の針が昼の十二時を過ぎた頃、桜子と遊ぶ約束をしていた私は食事を済ませ家を出た。


『今日はさ、隣町へ行ってみよーよ。ほら、あの公園』

『ああ、最近出来た所でしょ?いいよ』


事前に予定も決めず、自転車であちこちぶらぶらするのが私達のマイブームなのだけれど。
ここ最近新しく開かれた、子ども心をくすぐるアスレチックが豊富な隣町の大きな公園ーーー早速好奇心旺盛な桜子に誘われ、そこへ向かうことになった。
風を切って二人で競うようにペダルを漕げば、どんどんと流れていく景色が視界に映る。
閑散とした町並みーーー平日休みって良いなぁ、なんて、優越に浸ったりして。


『楽しみだなぁ〜。あ、飲み物買っていこ』

『んー』


隣町へ入り、目的地に着く直前。
偶然目についたコンビニへ寄ろうと減速していた、時。
道路を挟んだ反対側の歩道をゆっくり歩く長身ーーー
朝とは違って私服だったけれど、誰なのか一瞬で分かった。

………?
出張は取り止めになったのだろうか。
家に帰って着替えてきたのかな。
そう思い、声を掛けようとした……の、だが。
最初のひと言を発する前に、静かに口を閉じた。
隣に寄り添う、知らない人影に気付いたから。



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