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【イケメン戦国】戦国舞花録

第23章 『理由』 ※微R18






あれは確か、
小学生の頃だった。
少なくとも今よりは素直で、純粋な心持ちだったと思う。
目つきの悪さは変わってないけどね。

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『蓮、あんたまた拾ってきたの!?もう駄目って言ったでしょ!』

『だって可哀想だもん。うちで飼う』


習い事からの帰り道、
いつものように桜子と取っ組み合いの喧嘩をしたあと。通りがかった公園の片隅で鳴いている一匹の子猫を見つけた。
辺りには飼い主も親猫の姿も無かった為連れ帰ってきたのだけれど。
家には既に飼い猫が三匹ーーー
そのどれもが以前拾ってきたという経緯があって。
これ以上増やすな、と母親は呆れていた。


『駄目ったら駄目!いい加減にしなさいっ!』

『やだ。うちの子にする』


ぎゅう、と抱き締める腕の中では黒毛の子猫が幼い鳴き声を上げている。
………どうしても見捨てることが出来なかったのだ。
終わり無き言い合いを繰り広げる私と母のそばでは、困惑気味の姉がオロオロと互いの顔を伺っていたーーーそんな時。
珍しく早い時間に仕事から帰宅した父親が、苦笑いを浮かべながら割って入ってきた。


『まったく騒がしいなぁ。まぁまぁ、いいじゃないか。あと一匹くらい増えても』


貴方は甘いのよ、と責め立てる母をなんとか宥め、説得してくれたあと。私と同じ目線まで腰を屈め、優しく目を細めた。


『その子はうちの家族に迎えよう。ただしこれで最後にしろよ?』

『……うん!ありがとうお父さん!』


ホッと胸を撫で下ろすと同時に嬉しさが湧き上がり、子猫を抱いたまま父の胸に飛び込んだ。
微かに感じる、煙草の匂いーーー
たまらなく好きな、父の香り。


『私、大人になったらお父さんみたいな人と結婚する!』

『ははっ、気が早いなぁ』

『ほんとだよ!お父さん大好き!』


背が高くて、格好良くて、優しくて。
大好きだった。
大好きだった、のに。ーーー




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