第5章 『抑圧』
突然の悪天候で捜査は難航し、その後も発見される事なく打ち切られた。
まだ生きていると願い続けるも、残酷な時の流れは年月と共にひしひしと“もう彼はいない”という現実を私に突きつけていった。
あれから三年、誰とも恋はしていない
してはいけない気がした
「!」
頬に伝う涙をペロリと舐められる感触。
黒くて丸い、心配そうな瞳。
「村正……あんたまた追いかけてきたんだ」
まるで、誰かさんみたい。
ギュッと抱き締め柔らかい毛の中に顔を埋めた。
私は、知ってるんだよ。
幸が私の事を想っててくれてるって。
気付かない振りをして、今まで接してた。
信玄様や謙信様がいつも大体近くにいたから、それでやってこれた。
でも二人きりになると、気持ちが揺らいで止められなくなりそうなの。
恐いんだ。
光太郎を裏切ってるような気がして。
だから私はまだ前に進めない。進んではならない。
ましてや姿形が似てるあなたに