第23章 『理由』 ※微R18
「地位も富も名誉も……何もかも恵まれたあんたに分かる訳ねぇだろ!
俺みたいな凡人とは持って生まれたモンが違うんだ」
「……違わないさ」
「違うに決まってんだろ!同情なら要らねぇ。そんなもん、犬にでもくれてや……」
「違わない。
俺もお前と同じ、農民の出だからな」
「え………」
上等な着物、豪華な食事、立派な御殿ーーー
こんな何不自由のない暮らし、
あの頃の自分には想像もつかなかった。
父親を早くに亡くし、そのあとにやって来た義理の父とは反りが合わず。
義父と母親の間に生まれた弟や妹達とも見えない壁に阻まれ決して良い関係ではなかった。
『俺はあんた等とこんなところで一生を終える気は無いね』
そんな暮らしに嫌気が差し、十五で家を飛び出して………
啖呵を切ったはいいものの、あちこち彷徨い案の定 食うものに困り果てて。盗みを働いたり良からぬ輩とつるんだりもした。
いつか這い上がってやるーーー
そんな野心を燃やしながら様々な人間と渡り合い経験を積み、身の振り方を模索していた。
そして、巡り巡って辿り着いた先……恐れ多くも信長様の下に仕える事となり。
有り難くも評価を頂き信頼を得て、こうして現在に至るーーー
「………そーかよ。
なら尚更俺の気持ち分かんだろ。ここから出せよ」
「そうはいかない。お前には助けが必要だ」
「なんでだよ!俺だってひとりで……」
「盗みを繰り返すんだろ?そのうちそれだけじゃ食っていけなくなって人を襲うようになる。脅して金を奪い、身ぐるみ剥いで……終いには殺しも厭わなくなる。お前達一家を襲撃した野盗みたいにな」
「……なっ……!!」
「そうならない為にも、お前を助けたいんだ」
人としての良心を失い、墜ちていった奴等を腐るほど見てきた。
これから先の世を担う幼子達にはそのようになって欲しくない。
俺も然り、それこそが信長様の願いなのだーーー