第23章 『理由』 ※微R18
「なぁ、あんた偉い人なんだろ?俺を解放するよう信長様に言ってくれよ」
藤吉は俺の方へ目線を移すと、眉を吊り上げ睨むように見据えた。
そういえば部下から聞いた話だが先日、寺を脱走したことがあったっけ……
数日後やっと保護して連れ帰ったが、案の定腹を空かせて朦朧としていたそうだ。
解放すればまた同じ状況になってしまうーーー
「その要求には応えられない。藤吉、理由は分かるだろう?先日思い知ったじゃないか」
「…………。
あの時はたまたま盗みが上手くいかなくてちょっと腹を減らしてただけだ」
「盗み、ね………」
「そうさ、俺は盗っ人だ。ここに置いてたら町の奴等から非難されるんじゃねーの?
それが嫌だったら早く解放しろ!二度と連れ戻しに来るな!俺は一人でもやっていけるんだ!」
寺で用意した飯には最低限しか口を付けず、新しい着物を与えても袖を通さない。勉学などそっちのけ。
ここに居れば食い物にも着るものにも困らない。なのに何故恵まれた生活を放棄しようとするのか。
・・・・・
深入りするつもりは無かったのだが、その意地を張った生意気な瞳と懐かしい名前がどこか昔の自分と重なっているような気がしてーーー
どうしても放っておけなくなった俺は話し合いを持ち掛け、蓮共々、近くの木陰へと誘った。