第23章 『理由』 ※微R18
そこへ一気に注目が集まる。
シン、と静まる一同………
足の爪先を使い障子の枠を押し開けている不躾なそいつは、不機嫌そうな目つきで室内を一瞥していた。
ボサボサの髪、ツギハギが目立つ粗末な着物、頬には喧嘩の傷跡。
そしてあの生意気な表情………間違いない。
あいつはーーー
「…………これ、藤吉。どこへ行っていたのです?今日も遅刻ですよ」
「いつどこへ行こうが俺の勝手だろ。いちいち干渉すんなよ」
「干渉ではありません、心配しているのです。そんなことでは規律を守れない大人になってしまいますよ。ほら、席に着いて皆と一緒に学びましょう」
「規律?けっ、そんなもん知るか。俺の人生なんだからどうするかは俺自身が決めるんだ。口出しすんじゃ………」
穏やかな口調で諭す正仲に対し、声を荒げて反発する“とうきち”と呼ばれた少年ーーー
そう、いつぞや町で万引きしていたあの子どもだ。
向こうも私の顔を覚えているようで、こちらに気付いた瞬間大きく目を見開いていた。
「お前っ……あの時のデカ女!なんでここに……っ」
「………。
口のきき方がなってない餓鬼だね。こないだの件も含めて滾々と説教してあげる」
ゆらりと立ち上がり、眼光鋭く歩み寄っていくと……
殺気を感じ取った藤吉は焦ったように踵を返し走り出した。
「待ちなっ、糞餓鬼!!」
「やなこった!誰が待つかぁーーー!!」
逃がすまいと後を追う蓮が障子の外へと消え、二人のけたたましい足音が遠のいていくーーー
全く状況が呑み込めずにいる三成や子ども達がポカンとするなか、正仲は動じること無くまた優しげに目を細めるのだった。