第23章 『理由』 ※微R18
なんだかんだと探りを入れられつつ厨まで膳を運んで貰い、
そのあとは女中達と片付けや洗濯、掃除などいつもの通りに順序良く仕事を済ませていき………
今日もまた暇な時間帯に突入だ。
娯楽が少ないこの時代、暇潰しになるようなものなんて限られてる。男遊びも勿論楽しいけれど、他に何かないのかと考えた結果。
あることを思いついた私はとある人物を訪ねた。
午後ーーー
澄んだ青空の下。
一歩、一歩と歩くたびにぴょこぴょこと跳ねた寝癖が振動で揺れている。
自分とほぼ同じ目線の高さに位置しているそれを背後から暫く見つめていると。
いつの間にやら目的地に到着したらしく、立ち止まったそいつはくるりと振り向いた。
「さぁ、こちらですよ。蓮様」
にこやかな淡い薄紫色の眼差し。
天からそそぐ太陽の光に照らされ、笑顔には煌めきが増すばかり………ああ、これが俗に言う癒やし系というやつか。
そんな優男・石田三成に案内された先ーーー
荘厳な雰囲気が漂い、
此処だけ違う時間が流れているような……
崇高で趣きのある造りに思わず息を呑む。
ーーーそこは安土城郭内にある寺院。
存在は知っていたが、中へ入るのは初めてだ。
「こんなとこ、邪悪な私が踏み入れたらバチが当たるんじゃないの」
「ふ、そんなことはありませんよ。
さぁ中へどうぞ、ここなら穏やかな心持ちで学術を学べます」
そうーーー
持参した本は読み飽きてしまい、どうしようもなく暇を持て余していた読者好きな私は、あの書庫にある大量の書物がずっと気になっていた。
しかし如何せん文字が読めない………そこで思いついたのだ。せっかく戦国時代に居るんだし字の読み書きでも習ってみようじゃないか、と。
故にとりわけ賢そうなこの男に話を持ち掛けてみたという訳だ。
笑顔を保ったままの石田に導かれ、学び舎として紹介された此処の敷居を跨ごうとしたその時………
奥から複数の幼声が聞こえてきた。