第23章 『理由』 ※微R18
「………どーも。
こんな手伝いするほど暇なの?あんた」
「暇、か……持て余してみたいものだな。
生憎俺はこの後他所へ所用を済ませに行かねばならんのだが……まぁ、通りがかったついでだ」
皮肉を返してみるものの、苛つく素振りなど一切見せずに。
マイペースに歩き進んでいるようでいて実はさり気なく私の歩調に合わせてくれている。
意地は悪いが、性根までは悪くないようだ。
「時に、蓮。
御館様を陥れる為に日々画策しているようだが順調か?」
「ん〜全っっ然ダメ。あの男、ほんと隙が無さ過ぎてこっちはもう手詰まり状態でさ。ムカつくから毎日ずっと念を送ってる」
「くくっ、苦戦気味だな。
………その鬱憤を晴らす為ここ最近やたら頻繁に夜遊びしているという訳か。城から抜け出すお前の姿を幾度となく目撃したぞ」
思わずギクリ、としてしまった。
あれだけ警戒していたというのにまさか見られていたとは………
しかも己の主君が狙われているというのになんだか愉しげに笑みを浮かべていて、まったくもって掴みどころの無い男だ。
「夜遊びじゃ無いから。ただ散歩してただけ」
「ほう……」
「………。
あんた、それ誰かに言った?」
「いや、今のところは。………知られてはまずい相手でも居るのか?」
口の片端を上げ、くつくつと喉を鳴らし面白がってこちらを伺う明智の様子に苛立った私はめいっぱい力を込めて睨んでやった。
まるで全てを見透かされているような、手中で転がされているようなーーーそんな感覚に苛まれて。
こいつを敵に回したら厄介だな、と、悔しいけど本能でそう悟った。
…………誰と寝ようが私の自由だし別にバレても困ることは無いけど………
無いつもりだけど………
なんとなく、なんとな〜く、知られたくない相手の一人や二人は居る訳で。
その時
そいつの顔がふっと脳裏に浮かんだのだが
"なんとなく”の理由は分からなかった。