• テキストサイズ

【イケメン戦国】戦国舞花録

第22章 『衝動』





へぇ、本当に来たか。
先日、あいつがここを出ていく間際。
冗談半分に誘った俺の耳へ返ってきたのは、予想通りの素っ気無い答え。

ーーーまた、気が向いたらーーー

“らしさ”が垣間見え、思わず笑みを零してしまった。まぁ俺も同感だけどな。
以降、城にて会えば挨拶程度の言葉は交わすものの特に何の意識もせず、自由気ままに今日まで過ごしてきたという訳だが。


「はは、ちっとばかし間が悪かったな」


こっちは一刻ほど前に女を抱いたばかり。
そしてそろそろ夕餉時。
仕様が無い、飯を食わせてやったあと城へ送り届けてやるかーーー。

ふらりと御殿に訪れた蓮は
女中が案内した来客用の部屋から抜け出し勝手に俺の部屋へ上がり込んでいる、とのことだ。
ふてぶてしく煙を吐く姿を想像しながら通路を歩き進んでいき、自室の襖を開くと。


「ーーー………」


橙色の光が僅かに差すだけの、薄暗い室内。
頭に浮かんでいた人物はこちら側に背を向けた状態で畳に横たわっており、肩が規則的に上下している。

つい先程目にした女のそれとは違い、
不貞腐れたような、物悲しさを纏っているような………そんな背中だった。

一歩、また一歩と近付いてみれば。
くの字に腰を折り曲げ、
腕の中に抱き締めている照月へ頬を寄せる寝顔がそこにあり………
……………。
なんだかまるで、説教を喰らったあとの子どもを彷彿とさせる。

何故かは分からないが………
男並みの長身を誇るはずの彼女が、小さく見えた。



/ 493ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp