第22章 『衝動』
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「……………っ!!!」
片眼を開くや否やーーー
勢い良く飛び跳ねるように起き上がり。
直ぐさま右眼を手で覆い、眼帯の布地の感触を確かめる。
周囲を見渡せば、見知った部屋の造り。
隣には、横たわって眠る女の背中。
……………
ああ、そうか。
城で政務を終えたあと、たまたま出くわした一人の針子を誘い適当な部屋へ連れ込んでーーー……
徐々に鮮明に蘇ってきた記憶を辿り、
ようやく現在の状況を把握するに至る。
「眠っちまった、か………」
事後、さっさと帰るつもりだったんだがな。
思いのほか長居してしまったようだ。
………しかし今更あんな遠い昔の、
忌わしく暗い幼少時代……そしてあの眼を始末して貰った過去が掘り出されるなんて。
今日は夢見が悪いーーー
騒いでいた心臓も落ち着き、
頭を掻きながらのそりと腰を上げて身なりを整える。
そろそろ頃合いだとでも告げるような、窓障子から差した茜色の光を浴びた政宗は、畳に敷いた羽織の上で幸せそうな寝息をたてて眠る女を一瞥しーーー
静かに、襖を閉めた。
安土山を下り………
予定時間を大幅に喰ったことにより夕餉を作り損ねたと悔やみつつ、御殿の玄関口へ足を踏み入れると馴染みの女中がにこやかに出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、政宗様。
蓮様がいらっしゃっておりますよ」