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【イケメン戦国】戦国舞花録

第22章 『衝動』





「なっ……
あんた、自分が何言ってるのか分かってんの!?」

「うん、もちろん!
じゃないと信長様にあんな賭けなんて挑まないよー。私はここで夢を叶えるって決めたんだ」


徳川家康の花嫁候補ーーー最初聞いた時は驚いたが、どうせそれはただの一時的な“ごっこ遊び”だろうと踏んでいた。
それなのに、まさか本当に、本気なのかコイツは。

呆然とする私の目の前で
えへん、と胸を張り腰に手を当てて
全く緊張感の無い声音で宣言してる。

馬鹿げてる………
傍らでは、姉がにこやかに応援の拍手を鳴らす有り様。
価値観が違い過ぎるのか?
後悔やら自責の念うんぬんと悩んでいた自分が阿呆らしく思えてきた。
ああ………なんだか頭痛がする。


「大丈夫?顔色悪いよ蓮さん」

「はぁ……お気遣いどーも、インテリ君。
ま、兎にも角にもあんたの調査報告を待つしかないってことは理解出来たよ。
桜子に返事の手紙書くから届けてくれる?」

「そのつもりだけど……それ、俺のあだ名?」


もしかしてまともな価値観が通じるのはこの男だけかもしれない、なんて溜め息を吐きつつ。
小梅が用意した少女趣味な柄の便箋に
女三人、順番に文章を書いていく。
ひとりひとり、思いの丈をーーー


「……“こっちに来ないで”………と」


迷い無くペンを走らせている私の文面を見て皆がぎょっとしてる。
だってそりゃそうさ、こっちの身にもなってみろってんだ。
ただでさえ気苦労が絶えないっつーのに、桜子……あんな騒がしい奴の面倒まで見きれないからな。
次のワームホールが現れるまでここはひとつ、春日山の連中に押し付けておこう。


「………よし。じゃあまたね、インテリ。
あの脳筋女によろしく伝えといて」

「え……蓮さん、ちょっ……」


騒然とする一同を余所に、
カラン、と書き終えたペンを文机の上へ放るや否や蓮はさっさと腰を上げ、部屋を出ていったのであった。・・・・・



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