第22章 『衝動』
桜子の無事が分かった今、
次なる重要な問題は………
そう。
私達はいつ現代へ帰れるのか、ということだーーー。
いつ?どこで?
それを知るにはこの男の存在が不可欠。
ワームホールとかいう一般には非現実的な現象について研究を重ね、自らタイムスリップを体験。
それだけではなく、日時や場所まで特定できるなんて………
もはや空想上という言葉では片付けられない、世紀の大発見。
大学院にて宇宙物理学を専攻していたそうだが………アインシュタインもびっくりのとんでもないインテリ野郎だ。
さぁ、その頭脳を駆使してまたワームホールへ導いて貰おうかーーーそう期待していたのだけれど。
「まだ分からない……!?」
「ああ……。
次のワームホールがいつ、どこで起こるのかは現時点ではまだ把握できてないんだ。
済まないがもう少し待ってて欲しい。……調査結果が出たらすぐに教えるから」
ワームホールの出現は不規則で、
数週間後、数ヶ月後、数年後………最悪もっと先まで待たなければならない場合もある、とのこと。
・・・・・
もしも何十年もかかってしまったらーーー
桜子と小梅を巻き込むなんて軽率だったと後悔が押し寄せ、ギュッと煙草のフィルターを噛んだ。
しかし。
自責の念に駆られている私の腕に抱きついた小梅は、あっけらかんとこう言った。
「私、帰らないよ?」
「………え」
「私、家康のお姫様になって戦国時代で暮らす!
もしずっとワームホールが現れなくても将来桜子ちゃんの面倒は私が見るから、心配しなくても大丈夫だよ」
八重歯を覗かせてにっこりと微笑む、可愛らしい幼顔。
周囲から白い目で見られようとも、大人になってもずっとおとぎ話に憧れて、夢見がちで。
もしかしたらとは思っていたが、まさか本当にーーー