第22章 『衝動』
私の攻撃的な振る舞いを宥め、
悲しそうに細めた瞳で見つめてくる。
………そんな顔をされては調子が狂ってしまうではないか。
ああ、私はどこまでも姉に弱い。
「蓮……もう佐助君を責めないで」
「責めるに決まってんでしょ。この男が手引きしたせいで……」
「何度も言うようだけど私が頼んだことだから。この時代へ戻ってきたのは私の意思なの」
「でもっ……」
「それにね、山林で倒れてた桜子を助けてくれたのは佐助君なの。住むところも確保してくれたみたいで……」
・・・・・
元はといえばこいつが招いたことなんだから、助けるのも居住先を世話をするのも当然の配慮だろ。
当然ーーー
………でも、もしもこの男が居なかったら。
桜子はきっと途方に暮れ、独りで野垂れ死んでいたに違いない。・・・・・
そう思うと、
もっと罵倒してやりたかったはずなのに私の手はゆるりと下がっていった。
奴はというと、終始冷静さを保ったままで。
皺が寄って乱れた衿元を淡々と直しながらボソリと呟く。
「………さっきは棘のある言い方をして悪かったね。君の気持ちも考えずに」
「別に。
……桜子を助けてくれたことに免じてひとまず休戦してあげる。
あいつの状況がどうなっているのか詳しく聞かせて貰おうじゃないの」
決して悪い奴ではないのだ。頭では分かっている。
完全に腹立たしさが消えた訳ではないが、一旦怒りを呑み込み今はまず話を聞かなければ……と。
どっかりと無作法に座り、
懐から出した煙草を咥え火をつけた。