第22章 『衝動』
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それから数日後ーーー………
私は淡々と女中の仕事を続け、
小梅は御殿での生活を満喫し、
姉は織田と仲睦まじく過ごしてる。
そんな織田にひと泡吹かせてやろうと日々企んでいるのだが、奴はまるで隙が無い。
一人きりになったタイミングを見計らって背後から忍び寄ろうとするも、即行で気付かれてしまう。
死角から睨んでいるだけでも奴にはお見通しらしく、「なにか用か?」と余裕たっぷりに声をかけてくる始末だ。
後頭部にも目がついてるんじゃなかろうか。
豊臣の喝が効いたのか、天主階段の入り口に座する見張り番はピリピリと緊張感を強めていて、夜間の奇襲作戦は断念せざるを得ない。
他に良い方法はないものかと模索しつつ
仕事の合間、暇を持て余していた私は持参した本をパラパラとめくった。
ーーー現代とは違い、無駄な雑音は聞こえず
ゆったりと穏やかに時が流れてゆく。
現代人は時間にうるさい。
一分一秒にあくせくと振り回される様は生き急いでいるかのようにも見える。
時計があまり普及していないこの時代では太陽の位置でなんとなくの頃合いを把握するそうな。
のどかで、悠々としていて………
こういうのは嫌いじゃない。
落ち着いた気分に浸り、
さて一服でもしようかなと煙草ケースへ手を伸ばした、時。
部屋の外から姉の声がした。
返事をすると、やや慌て気味に襖がスッと開く。
「………何?」
「蓮、私の部屋へ来て!」
「いきなりどうしたの?」
「桜子の居場所が分かったの!
今ね、佐助君が来てくれてて………色々と説明してくれるらしいから一緒に来て!」
「ーーー!!」