第22章 『衝動』
背後で政宗と蓮が攻防していたことなどまるで気付きもしない百合はのほほんと朗らかな笑顔を携え、そばで佇んだままの家康に問いかける。
「あれー?政宗と二人で遊んでたの?」
「遊んでるように見える?政宗さんとはさっき偶然会っただけ。
薬の調合に使う材料も買い揃えたし……俺はもう帰るから」
「そっか…………ん?
小梅は一緒に来てないんだね」
「………なんであの子の名前が出てくるの?
一緒な訳無いでしょ」
「小梅ね、やけに嬉しそうに“大事な用事がある”、って言ってたの。てっきり家康とお出掛けでもするのかなって思ったんだけど……違うのかぁ」
ん〜…?と人差し指を顎に当てて考え込む姉と同様に私の頭にもクエスチョンマークが浮かんだ。
ストーカー気質のあいつが“王子様”と称する標的ーーー徳川を放ったらかしておく筈が無い。
………ああ見えてキレ者だからな、
裏でなにやら画策してるのかもしれない。
「…………俺、なんだか悪寒が……。嫌な予感がする」
「えっ、家康風邪でも引いたんじゃ……大丈夫!?」
「………」
ぶるりと身震いし顔を強張らせる徳川は
的外れな姉の発言をジト目でかわし、
先に帰ると伊達に言い残して不安げに去って行った。…………
さて、どうなることやら。
巻き込まれない位置で高み見物するのも一興だな。
同情半分、揶揄い半分で
ぷぷ、と邪気に笑っているとーーー
突然勢い良く腕を引き上げられる感触。
「お前等まだ時間あんだろ?菓子でも振る舞ってやるから来いよ」
「は?あっ、ちょっと……」
隻眼を細めた伊達はろくに返事も聞かず、ぐいぐいと強引に私達を茶屋から連れ出していく。
来いよ、って……
一体何処へ連行するつもりなんだこの男はーーー