第22章 『衝動』
伊達に連れられるがまま、町を離れていき……
姉は嫌がるどころか目を輝かせて「政宗のお菓子楽しみだなぁ」なんて話してる。
そんなに男の手作り菓子が待ち遠しいか?
いまいち理解出来ない。
「……あんたさ、何を作ろうとしてんの?」
「あー……大したもんじゃないけどな。
さっき町で買ったこれを使おうと思ってんだ」
抱えていた風呂敷を解き見せてくれたのは、茎に連なった枝豆ーーー。
青々とした葉もついていて、新鮮さが際立っている。
………?
枝豆を使った和菓子、って何かあったっけ……
料理は得意だが菓子作りに関してはあまり経験や知識が無い私は、見当もつかず。
茎の先端をつまんで頭上へ掲げ、ぶらぶらと揺れる一房の枝豆をジッと睨んでいた。
ーーーそうこうしてるうちに、
辿り着いた先ーーー
面前には、荘厳な屋敷。
安土山の中腹に構えるこの建物は、
伊達政宗の御殿だという。
御殿ーーー大層ご立派な響きだ。
「まぁ、上がれよ」
そう招かれた私達は、門をくぐり……
玄関口では女中に手厚く出迎えられ。
特に緊張感も持たず、気軽に敷居をまたいだ。
「へぇ〜、あんた城に住んでるんじゃないんだ」
「他の奴等もそれぞれ御殿があるんだ。
昨夜は夜遅くまで宴だったから城で寝泊まりしていたが……」
言い掛けて、こちらを伺った伊達は意味有りげに唇に弧を描いた。
ーーー昨夜は、ね。
そうだ。
私は昨夜、この男とセックスしたんだっけ。
そして今日は成り行きで何故か手作り菓子を食べに御殿へ………
………変な展開。
ふあぁ、とあくびをしつつ
伊達の後に続いて廊下を歩き進んでいきーーー
ある部屋の手前で止まり、襖が開かれる。
室中を覗くや否や………
思わずカッ、と目を見開いてしまった。