第22章 『衝動』
作業は順調に進みーーー
塵や埃などを隅々まで、かつ丁寧に手早く拭き取っていき………
ひと通り清掃を終わらせたあと、書庫内をぐるりと回り棚の表面を指でなぞる。裏返してみると指の腹には汚れは何も付着していない。よし、これでいいだろう。
最後の見直しに目を光らせ、出来栄えに満足した私は退出しようと引戸を開けたーーー瞬間。
数人の女中達がドッと押し寄せてきた。
「「「蓮様ぁ〜!お疲れ様ですぅぅぅ」」」
「ひっ……!?」
何事かと身構えるも、
あっという間に囲まれてしまい………
きゃっきゃとまたあの黄色い声が飛び交う異様な事態に苛まれた。
・・・・・
なにこれ………
まさかの出待ち………!?
現代での記憶を彷彿とさせる彼女達の行い。
時を越えてもなお、こんな目に合うとは……
ああ………耳がキンキンする。
どうせ囲まれるならリンチされた方がまだマシだ!
「ご苦労さまです、蓮様!さっ、この手拭いで汗をお拭きになって」
「い、いや……汗なんかかいてないけど……」
「ねぇ?普段何を召し上がってらっしゃるの?私も蓮様みたいな見目姿になってみたいわ」
「………特別変わったもんは食べてない」
「休憩の頃合いですし、一緒にお茶でも飲みながらお話しましょ!どんなお茶菓子がお好きですか!?甘いもの?しょっぱいもの?」
「………………」
矢継ぎ早に話し掛けられ、ひとりひとりに返事をするのが最高に面倒臭い。頭痛さえ引き起こしそうだ。
あまりの鬱陶しさに、どうやってこの場を切り抜けようかと思案していると………
通路の奥にある曲がり角から現れた、見慣れた二人の姿が視界に入り。
いいところに来た!と、ホッと胸を撫で下ろした。