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【イケメン戦国】戦国舞花録

第22章 『衝動』





てっきり一緒に出て行くと思ったのに。
奴ーーー豊臣は、なにやら棚の前できょろきょろと本を物色している。
ここを空けてやれ、と石田に命じたにも関わらずあんたは何故残ってるんだ。

また私のところに現れて………
飽きもせずに再び説教でも喰らわせに来たんだろうか。



「………何やってんの?あんたも早く出てって」

「目当てのものを見付けたらすぐに出る。
ここへ来たのもその為だからな」


そう言って目線は並んだ本へ向けたまま。
なるほどね、と納得するも、
二人きりの時間はやはり居心地が悪く。
この状況から早く脱出するには、面倒臭いが本探しに加担してやってさっさと追い出すしかないーーー


「………何?どんなやつ?特徴を教えて」

「背表紙が深い緑で、格子模様が施されて……
………って、手伝う気か?」

「邪魔だし気が散るからね。仕方無く」

「………。もっと可愛げのある言い方したらどうだ?」

「無理」


腕を組みキッパリと即答した私は
ったく、と呆れたように呟く豊臣と共に
あれでもないこれでもない、と大量の本の中から目当てのものを探し求めたーーー。












緑の背表紙に、格子模様ー………



じぃっ……と並列した背表紙を目で追うだけの作業。
暫く書庫内は沈黙に包まれていたのだが、
秀吉が何気無く口を開く。


「しっかし………
まさかお前が下働きを志願するとは。驚いた」

「意外?」

「ああ。怠慢な女かと思ってた」

「あ、そ」

「心根は真面目なんだな」

「別に。ーーー働かざる者食うべからず、って信条に従ってるだけ」

「………ふ、どこまでも可愛げねぇなぁ」


・・・・・


ーーーあ、笑った。


特段面白いことを口にした訳でもないのに、
それまで私に対して険しい表情だったそいつは急にふわりと笑みを浮かべていてーーー。


なんだか直視出来ず、目線を棚へ戻した。



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