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【イケメン戦国】戦国舞花録

第22章 『衝動』





書庫内は薄暗く、独特の空気を醸し出していて……
棚には様々な大きさや厚さの書物がギッシリとひしめき合っている。

格子窓から差す日の光の下ーーー

行儀良く正座をして読書に耽っている石田は私の気配に気付きもしない。
そしてその身の周りには何冊もの書物が塔のように積み重なっていた。


「読書中のところ失礼。掃除したいから一旦出てってくれる?」

「…………」


声を掛けたが、返答が無い。

・・・・・

何………?シカトかよ。

若干苛つき、そばまで歩み寄る。
奴の真正面で仁王立ちした私はもう一度コンタクトを試みた。


「ねぇ、聞いてんの?」

「…………」


またもや無言の答えが返ってくる。
苛々が加速してギロリと見下ろすも、そいつは石像の如く微動だにしない。
さらさらとした艶のある灰色の髪には一部分に寝癖らしき跡がついていて、
間抜けに跳ねた一束が無性に腹立たしく感じた。


「ねぇってば」


すっとしゃがんで顔を覗き込んでみると……
眼鏡レンズの奥から垣間見える真剣な瞳は、手元の書物だけを捉えたまま紙面に羅列された文字をひたすら読み取っている。
忙しなく上下に動く睫毛ーーー
かなりのハイスピードで黙読しているようだ。

わざと無視している訳ではないと察するが、ここまで熱中するとは………そんなに面白い本なんだろうか。

ぐっと身を寄せ、大きな声で再チャレンジしてみる。


「石田」

・・・・・

「おい、石田」

・・・・・

「ぶっ飛ばすぞ石田」

・・・・・

「もしもーし」

・・・・・

・・・・・

・・・・・


ーーー駄目だこりゃ!

こんなに至近距離で呼び掛けてるのに無反応なんて。
何かに取り憑かれているのでは……と馬鹿げたことを思ってしまうほど困惑していた私は、石田を現実の世界へ引き戻す為に一発平手打ちでもお見舞いしてやろうと腕を振り上げた。

するとーーー

背後から、
ギシ、と床板を踏む音がした。



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